善き人のためのソナタ
【善き人のためのソナタ】
<評価>93点
<キャスト>
監督 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
脚本 フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
<出演者>
ウルリッヒ・ミューエ
マルティナ・ゲデック
セバスチャン・コッホ
<あらすじ>
ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツを舞台に、強固な共産主義体制の中枢を担っていた
国家保安省の実態を暴き、彼らに翻ろうされた芸術家たちの苦悩を浮き彫りにした名作。
国家保安省の局員ヴィースラーは劇作家のドライマンと恋人で、
舞台女優のクリスタが反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。
ヴィースラーの人格はほとんどなく、国家に命じられたまま、盗聴器を仕掛けて彼らの監視を始める。
ほぼ24時間体制で監視を続ける中で、自由な思想を持つ彼らに次第に魅せられていく。
そんな中で盗聴器から聞こえるピアノのソナタを聴き……。
<感想>
「善き人のためのソナタ」はドイツ映画となるが、ここまで面白い歴史に基づいたドラマはなかなかお目にかかれないと思います。ノンフィクションというわけではないが、ベルリンの壁崩壊前の東ドイツの歴史的な背景はそのままで、その中での人間ドラマは凄く面白い。
内容としては国家保安省であるヴィースラが劇作家であるドライマンと女優のクリスタが反体制であるという証拠を掴むために、二人の生活を盗聴する。しかし、何の感情も抱かずに任務だけを遂行するだけなのに、盗聴器から聴こえるのは自由な思想、二人の愛の言葉。それはヴィースラには初めてのもの。おそらく、これまで国が全て正しいと洗脳されてきたはずなのに、自由に触れ次第に変わっていく様子に見入ってしまった。そして盗聴器から聞こえるピアノのソナタにより、ある種の洗脳はなくなっていく。後に東ドイツが崩壊したように、自由とは人間には絶対に必要なものなのかもしれない。いくら塞いだとしても自由という魅力には勝てないってことなのかな~。
最終的にヴィースラはある行動を取る。それが実に人間臭いというか、洗脳とは程遠い人間らしさを伴った行動を起こすところが見せ場になるが、そこは実際に観てもらいたいと思います。
<内容にはあまり関係ないつぶやき>
この映画はレンタル屋で借りて観たのだが、観るキッカケとなったのは表紙にある盗聴器を耳に当てているヴィースラで、それが妙に印象的で、ハリウッド映画にはない渋さが気になりました。ドイツ映画はもう一つ好きな映画で「グッバイ・レーニン」というのがあるが、それと並ぶ名作だと思います。